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患者・家族からの声

 

ALS患者 中野玄三さん

ALS患者 中野玄三さん
 
2017.6.11
弊団体総会にて発表していただいた
ALS協会 佐賀県支部 中野 玄三さんのコメントの全文を掲載いたします。
 
 
 
本日は、限られた時間内に、できるだけ多くの思いを伝えたいと思いまして、原稿を用意してきました。
なお、この原稿は、わずかに動く足を使い、
パソコンを操作して自分で書いたものです。
 
■まず要望の前にお願いがあります。
最近2週間に渡り、NHK静岡の報道関係者からALSに関する取材を受けています。
内容は、
「今月21日の世界ALSデーにあわせて
 ALSの特集を放送しようと考えている」
というものでした。
それで、いろんなことに対して、今も取材を受けています。
その中で、こんなことを尋ねられました。
「どういう『考え方』あるいは『もの』があれば、
 ALSの方が生きられる・生きやすい環境が
 できると思いますか?」
という内容でした。
 
私はこう答えました。
 
社会全体の「延命処置」というネガティブな考え方、
医療者の「延命処置」という呼吸器装着を否定する考え方、
報道関係者がふつうに使う「延命処置」という言葉があります。
この「延命処置」という考え方・言葉は、
ALS患者に対して「なぜ、そこまでして生きるのですか?」と突きつけているようなもの。
生きづらい環境を作っていることに気づいてほしいと思います。
 
また患者さん自身も、自ら「延命処置」と言って、生きづらい環境を作って、生きる世界を狭くされているようです。
 
今の状況は、
社会も患者さんも「延命処置」という言葉を無神経に使い
「延命処置して生かす・生かされる」
と言っている状況だと思います。
 
患者さんは、
誰でも死にたくなんかありません。
しかし…
「無理して生かされるのなら、
 延命処置までして生きなくてもいい」
と考える人が出てきます。
諸悪の根源は「延命処置」という言葉です。
私は、
この「延命処置」という言葉をなくすために
6年前から闘っています。
本当にALS患者を理解している医療者は
「延命処置」とは言いません。
「人工呼吸療法」と言います。
 
1990年、
「人工呼吸療法」に医療保険の適用が法律で認められ、「人工呼吸療法」は国民の権利となり、ALS患者の人工呼吸器装着は「人工呼吸療法」として、位置づけられました。
つまり27年前に、
ALS患者の人工呼吸器装着は
「延命処置」ではなく「人工呼吸療法」となったのです。
 
しかし、
いまだにALS患者の人工呼吸器装着を、
延命処置と考えている医療・福祉関係者、報道関係者が多く見られます。
結果として、
ALS患者本人も、その家族も、周りの人々も、
人工呼吸器装着を「延命処置」として捉えてしまっています。
 
 
これがダメだと思います。
 
これでは、
ALSを発病して、人工呼吸器装着と聞いた本人は、
「無理して生かされる」という印象を持ち、
そして、その家族や周りの人々は、
「無理して生かす」という印象を持ちます。
つまり、
ICU(集中治療室)に入るようなイメージを持ってしまうのではないでしょうか?
 
 
同時に、
「無理して生かす、無理して生かされることに、
 何の意味があるのだろうか?」
と家族や本人が思っても不思議ではないと思います。
ALS患者の人工呼吸器装着に対して、「延命処置」という間違った認識をなくし、「人工呼吸療法」という正しい言い方に変えることが、生きやすい環境を作る最初の一歩になると考えています。
 
この答えに対し、報道関係者から次のような返事が届きました。
「確かにまず、『延命処置をとる』のではなくて『人工呼吸療法』で治療を続けるという考え方にシフトしないといけないと思いました。
今後の取材に役立てさせていただきます。」
 
 
みなさんにもお願いです。
どうか、ALS患者の人工呼吸器装着に対して、「延命処置」という間違った認識を改め、「人工呼吸療法」という正しい言い方に変えていただくようお願いします。
そうすれば、
生きられる・生きやすい環境を作る最初の一歩になると思います。
どうぞよろしくお願いします。
 
 
■次に、重度患者が生活しやすい環境を作るために、支援体制を整えてください。
現在、全国的に見ても、多くの介護事業所は、
介護保険サービスや居宅介護サービスは受けても、
重度訪問介護サービスは受けてくれません。
佐賀県でも同じです。
介護事業所が受けてくれないというのは、何らかの制度の不備があるからではないでしょうか。
重度障がい者にとって、重度訪問介護サービスは命綱です。
その命綱を、誰でも受けられるように支援体制を整えてください。
 
また、
人工呼吸器装着者を受け入れてくれる
訪問看護と介護事業所(吸引と重度訪問介護サービスを受けてくれる事業所)が少ない状況です。
つまり、
支援を求めても、
それに対応できる支援体制がまだ整備されていません。
これは、在宅生活を脅かす大きな問題なので、シッカリ受け止めてほしいです。
 
 
■重度障がい者の地域間の格差をなくしてください。
住んでいる地域によって
「介護の時間数が、全然出ない」という声があります。
佐賀県内でも、
地域によって受けられるサービスの時間数が違います。
ある重度障がい者は、
その障がいと闘い、病気と闘い、負けるもんかと頑張っています。
しかし、地域の支援の壁にぶつかっています。
それでも、頑張らないと支援が受けられないので、さらに頑張っています。
でも時々、
頑張ることばかりで、どこまで頑張ればいいの…
と弱音を吐くことがあります。
どうか、
少しの頑張りで安心して過ごせるように、地域間の格差をなくしてください。
 
 
■これまでALS患者に限られていた、
 地域支援事業の「入院中のヘルパー付き添い」が、
 2018年度から全国一斉に「ALS患者および重度障がい者」へと
 対象が拡大されます。
患者と家族は前に進んだことを喜んでおります。
しかし、
ここでも重度訪問介護サービスを利用していることが前提になるようです。
せっかくできた支援制度を、実行可能なものにするために、重度訪問介護サービスの不備を点検して、多くの介護事業所が受けてくれるようにしてください。
 
残念ながら佐賀県では、
ALS患者さん以外で利用できる環境が整っている方は、まだいらっしゃらない状況です。
 
そういう中で、
私は入院時コミュニケーション支援を2年以上前から利用させていただき、大変助かっております。
病院の医師や看護師さんからも、医療事故を未然に防ぐことができるとして、高い評価をいただいています。
 
入院中のコミュニケーション支援について、私はたぶん、全国で誰よりも多くの体験をしていると思います。
 
昨年、
厚生労働省 難病対策課 課長 松原さんがお見えになった時、
患者がさらに安心して入院生活を送れるよう、
また、家族も安心して送り出せるように要望しました。
するとその後、要望した中の1つ、
体位交換などに関して、「病院の看護師さんが慣れるまでヘルパーが関わること」が特例として認められました。
これは大きな前進です。
 
ただ、食事介助については、変わらず看護師さんが担当することになっています。
この部分をなんとか特例措置を講じてください。
というのも、
在宅で暮らすALSのような重度障がい者のケアは、
一人ひとりオーダーメイドのケアです。
例えば、食事介助は、コミュニケーション支援よりさらに特別な技能が必要です。
技術を習得するのに3ヶ月以上かかります。
 
病院のベテラン看護師さんでも、「食事介助は特別な技術が必要なので難しい」と言います。
また医者は、栄養を口から摂るために、「ヘルパーさんに食事介助をお願いしたい」と言います。
ちなみに現在は、
入院中の食事介助は家族対応になっています。
 
このような事実がありますので、
「特別な技能を要する食事介助などはヘルパーが関わること」
を特例として認めてください。
ヘルパーが関わることができるようになれば、
患者・家族もより安心できると思います。
 
 
■災害時の避難支援計画は、ほとんど着手できていない状況です。
早急に個別支援計画の作成をお願いします。
 
 
本日は貴重なお時間をいただき感謝しております。
ありがとうございました。
 
佐賀県ALS患者
中野 玄三
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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